カテゴリー別アーカイブ: 魔性の女

Episode7~白い壁の向こうに⑤~

隣人の女はコンビニのカゴいっぱいにパンやらお菓子やらアイスクリームを買いこんでいて少し急いでいる様子だった。まあアイスクリームを買ったら誰でも急ぐよな~なんてノー天気なことを考えながら私もレジに並んだ。しかしあのアパートの間取りで誰かと住むなんて考えられないし一体なぜあんなに食べ物を買っていたのだろう・・お菓子はまだしもパンって意外と消費期限が早いしそもそも買いだめするタイプ人はコンビニじゃなくてスーパーに行きそうなものなのに・・不思議な人だ。しかしこの後さらに謎が深まる出来事が起こった。コンビニ飯を食べていると隣人の家から話し声が聞こえてきたのだ。ボロアパートなだけあって壁が薄い。会話の相手はどうやら男のようで時折声を張り上げている。喧嘩でもしているのか?気になったので大変下衆であるが壁に耳をあてて様子をうかがってみることにした。

Episode7~白い壁の向こうに④~

食事を終えて席を立とうとした瞬間、その人の携帯電話がけたたましく鳴った。取引先からの電話だろうか?あわてて通話ボタンを押して「はい、杉浦です・・ああ、いつもお世話になっています〇〇△◇##・・で、今・・・」話しながら私からどんどん離れていくので会話は全然聞き取ることができなかった。が、その人の名前が杉浦さんという事だけはわかったので良かった。確かに紹介された時に聞かされたのはそんな名前だった気がする。5分くらい話して戻ってきた後杉浦さんは会計を済ませ、一足早く会社へと戻っていった。いまさっき食べたばかりなのに相手ももうちょっと考えろよな~なんて思いながら私も会社へと戻った。そのあとも色々な説明を受けたり、書類を整理しているうちに退社時間になったので、早々と帰路についた。いくつになっても最初の日っていうのは疲れるものだ。炊事もする気分にもなれないので自宅の近くのコンビニへ寄った。だが思いもよらないことに弁当コーナーを物色しているとどこかで聞いたことのある女性の声で「こんばんわ」と話しかけられた。隣人の女である。

Episode7~白い壁の向こうに③~

引っ越した翌日の朝は少し寝坊してしまった。昨日疲れたせいなのか慣れない環境のせいなのかはたまた歳のせいなのか・・・歳はとりたくないものだな。急いで支度をして玄関で靴を整えていると靴のつま先と床がぶつかる音ととは別の音が聞こえたような気がした。ギィギィと何かを開け閉めするようなそんな音だった。会社につくと感じのいい小太りの男性が私を待っていてくれて支社のみんなに挨拶をするように促された。前にいた支所より人数は少ないがわきあいあいとしたアットホームな雰囲気っだたのでなんとかやっていけそうだなと思った。おそらくその小太りの男性がここの責任者なのだろう。名前はなんだったかな・・上司から聞かされていたのだがすっかりわすれてしまっていた。午前中は仕事の流れや機械の使い方などメモを取ることで精いっぱいであっという間にお昼の休憩の時間になってしまった。結局名前も思い出せないままだ。お昼ご飯はその名前を思い出せない人が御馳走してくれることになったので会社の近くの定食屋行った。

Episode7~白い壁の向こう②~

女は私の目をじっと見つめにっこりとほほ笑んだ。そして「これつまらないものですが受け取ってください」とタオルのセットを渡すと会話もほどほどに自宅へ帰っていった。普通引越しの挨拶は引っ越してきた方がするものだと思っていたがこの地域では風習が違うのだろうか?それに挨拶の品も・・まるで私がここに引っ越してくることをはじめから知っていたような・・腑に落ちない気分で私も家の中に戻った。今日はもう疲れたしカップラーメンでも食べて寝ようとダンボールからやかんを取り出し水を入れ、火にかけた。レトルト食品は引っ越す前にたくさん買い込んでおいたので当面の食料の心配はなさそうだが明日にでもスーパーに行かなければなあ。そんなことを考えているうちに沸騰を知らせる音が鳴り響いた。

Episode7~白い壁の向こう①~

私がこのアパートにやってきたのは3か月前の事。会社の転勤で引越を余儀なくされてしまったからである。住宅手当が出るので本当はもう少し良いところに住んでも差し支えはないのだが、私は独身で恋人もいないのでその分貯金にまわせばいいかと思いここに住むことを決めた。幸いトイレもお風呂もちゃんと家の中にあってセパレートになっているのでボロではあるものの特に不自由に感じる事はなかった。引越当日はダンボールやら家電、家具やらを指定の位置に運んでもらったり、ガス屋にきてもらったりととにかくバタバタして疲れてしまったので、ダンボールを開封だけしておいて、使いたいものから順に使ってその時についでに引き出しなどにしまえばいいやとたいして整理せずにそのままならべておいた。今夜は出前でもとろう・・ダンボールだらけの部屋に寝ころびながら携帯電話に手を伸ばす・・「ピーンポーン」「!!」突然インターホンが鳴り響いた。どこかの業者だろうか?でもこんな遅い時間に来るなんて非常識じゃないか?引越当日に居留守も気が引けたので仕方なく気だるい足を引きずってドアを開けた。

「こんばんわ、隣のS川です。」

白いロングコートを着た女だった。

Episode6~僕の妻(後編)~

妻が友人の会社で働き始めてから約半年、どうやら前の会社と違って理不尽ないじめを受けることもなく楽しく働けているようだ。前と違って必要な報告をしてもらえないとか、無視や陰口がなくなり仕事にも集中できるみたいで結構頼りにされているとか。本当に友人に感謝しなければな・・とこの時はまだそう思っていた。違和感を初めて感じたのはそれから3か月後、妻が突然会社への送り迎えはもうしなくていいと言ってきた。理由を聞くと社長である友人がこれからは送り迎えをしてくれるからだそうだ。でもなんでいきなりそんなことを言いだしたのだろうか。妻の面接のとき通勤方法を聞かれたが僕が送り迎えをすると伝えていたはずだ。それに僕になんの断りもなく一方的に決めるのもおかしいし・・もう今までの経験からすると悪い予感しかしなくて妻より早くに帰宅し、物陰に隠れて友人の車を待ち伏せることにした。ほどなくしてピカピカの高級車が家の前に止まり、フロントガラス越しに友人と妻が口づけを交わしたのが見えた。僕ははらわたが煮えくり返る気持ちで友人を運転席からひっぺがし胸ぐらをつかんで「どういうつもりだ!」と叫んだ。しかし意外にも友人は反撃してこずその場にへたりこみ「ごめんなさいごめんなさい」とつぶやき出した。妻も友人と一緒に泣きながら謝り始め、会社でしつこく関係を迫ってくる男性や女性社員からの嫌がらせに困るたびに力になってくれた友人を好きになってしまったと白状した。友人も自分の秘書として頑張ってくれる姿勢と美貌に夢中になってしまい、ダメだとわかっていても気持ちを抑えることができなかったんだと。友人は僕に「慰謝料も迷惑料も払うからどうか妻と別れてほしい」といい妻には「いつまでも待っている」と告げすごすごと立ち去って行った。もう僕たちは別々の道を歩むしかないのかもしれない。

Episode6~僕の妻(前編)~

妻は女優顔負けの美人で性格も優しく穏やかなので未婚・既婚問わず会う男性ほとんどが妻を好きになってしまいストーカーのような者まで現れることもありました。相手の方に失礼のないよう丁寧にお断りしているようなのですが、どうしても聞き入れてもらえない場合は僕の方から話をつけています。結婚前は職場で一部の女性から妬まれたり嘘っぱちの悪い噂を流されたり男性の上司からしつこく交際を迫られていたこともあって心身ともに相当参っていたので結婚を機に退職させ専業主婦になってもらいました。それから専業主婦として申し分なくやってくれていたのですが半年ほど経つとやはり仕事をしたいと言うようになりました。前職で辛い思いをしたこともあって心配でしたので友人が経営している会社に事情を話し、そこなら安心という事で働いてもらうことにしました。働き出してすぐは社員や取引先に言い寄られたり、一部の女性に心ないことをされたこともあったのらしいのですが、その都度友人が守ってくれたようです。しかし僕は甘かった。友人だって一人の男だということをすっかり忘れていたのですから。

Episode5~クラスのマドンナ~

1970年代のとある高校に通っていた僕、同じクラスにはKさんという女の子がいた。Kさんは美人で頭もよく僕みたいな冴えない男子にも話しかけてくれるいわばクラスのマドンナだった。パーマネントが流行っていたけれどストレートのロングヘアを貫く彼女は学年でも一番の美人だったと思う。僕は勉強が特別できる方でもなく、面白いことが言えるユーモアのセンスもなかったけれど一応、部活だけは頑張っていた。剣道部に所属していて1年生の秋には団体試合に出場できることになり、僕は勇気を振り絞って彼女に応援に来てほしいと手紙で頼んだ。返事がこないまま当日になってしまい、もうだめだと半ばあきらめていたにも関わらず、彼女は取り巻きの女子たちと一緒に応援に来てくれた。それを見た部活の先輩や仲間たちもいつになく張り切りだし、部長に至っては「試合に集中しろ!」と大声で言う割に他の誰よりもちらちらと彼女の方を伺っているもんだから可笑しくてたまらなかったのをよく覚えている。僕は今日の試合に勝ったら彼女に告白しようと心に決めていた。が、・・・僅差で負けてしまった。情けなくて応援席を見る事ができずそのまま帰路についた。あれから特に何事もなかったかのように日々は過ぎて僕もいつしか大人になった。もう会うこともないと思うが永遠のマドンナとして今でも心の片隅に存在している。

Episode4~私の妹~

私の妹は小さい頃はちょっと変わった子だなあ~て思うくらいで見た目はごくごく普通の女の子でした。でも小学校高学年くらいからものすごく開花していきました。なんていうか人の心をつかむのがとにかくうまい!この子の為なら何でもしてあげたいって思ってしまうんです!だから妹の周りにはいつもたくさんの男の子が護衛みたいについていました。女の子の友達もたくさんいたので特にそれが原因でいじめられるとかはなかったです。中学にあがってからは彼氏が切れたところを見たことがありません。どうやら彼氏がいる時から数人の男性が妹を狙い、別れそうになったら一気に男がアプローチしてくるらしいです。運良く付き合えた彼氏がすっかり妹にハマってしまって勉強がおろそかになり彼両親がうちに怒鳴り込んでくるなんてこともありました。とにかく妹は天性の小悪魔なんです。いや、もう魔性の女かもしれない。妹は男性に一切媚びることなくただひたすら我が道を行ってるだけなのですから。まるでどこかの教祖様みたいです。こんな妹を持つとコンプレックスに感じるのではないかと心配されますがまったくそんなことはなく、仲良し姉妹だと思っています。もしかしたら私も妹信者の一人なのかもしれません。

Episode3~魔性の女の結婚~

私は結婚するまで学校でも職場でも魔性の女と言われてきました。端正な顔立ちをしているとか人によっては美人、かわいいと言われます。色気はそこそこかな?私はいつでも自分のテリトリーを守りたかったのであまりプライベートを自分から人に話すことがありませんでした。そういうミステリアスな雰囲気がうけたのか凛としていて近寄りがたいのになぜか近寄りたくなる不思議な女ともよく言われてました。しかしながら、話さない代わりに聞き役として計算しながらたくさんの男性とお話はしてました。この人の性格上、こういったら喜ぶな!とか、こういうしぐさが喜びそう・・とか、とにかく相手に楽しくしゃべってもらえるように努力しました。おかげでとってもモテましたよ。自分でいうのもなんですが漠然とどんな男性でも落とせる自信がありました。そして今の旦那に惚れこみ、身も心も許して結婚しました。後悔はないです。いろんな男を見てきての結果なので大満足です。たまにパート先の男性に告白されたりしますが私の心が変わることはないでしょうね。